音読授業を創る  そのA面とB面と    07・8・23記




「アメンボはにん者か」音読授業をデザインする




●「アメンボはにん者か」(日高敏隆)の掲載教科書……………学図4上



            
筆者について


  日高敏隆(ひだかとしたか) 1930年、東京都渋谷生まれ。少年時
代から昆虫採集に熱中する。小学校から昆虫学者を志したが、両親の無理解
に苦しみ、担任教師が両親にかけあって昆虫学の道に進む。東京大学理学部
動物学科卒業。生物学者。動物行動学の分野を開拓したコンラート・ローレ
ンツやニコ・ティンバーゲンらの著作の日本語訳や、自ら記した一般向け啓
蒙書が多い。京都大学名誉教授。滋賀県立大学初代学長。
  主な著作「犬のことば」「人間についての寓話」「人間はどこまで動物
か」「昆虫という世界」「アメンボのスケート」「チョウはなぜ飛ぶか」
「ぼくにとっての学校ー学校という幻想」「動物言い分、人間の言い分」
「春の数え方」「動物の体色」など。


             
教材分析


  子ども達は昆虫が大好きです。よちよち歩きの幼児たちも、地面にいる
あり、だんごむし、こおろぎなどを見つけると、小さな手でつかまえようと
します。
  幼稚園児、小学生になると特に大好きなのはカブトムシです。姿形がグ
ロテスクで、力が強そうで、茶褐色に黒光りしているところがおもしろく興
味を示すのでしょうか。
  子ども達は、水面に浮いているアメンボにも興味を示します。アメンボ
をあみでつかまえようとしても、なかなかすばしっこくてつかまえられませ
ん。子ども達にとって、アメンボがなぜ水面に浮いてすいすい走ることがで
きるか、不思議でたまりません。なぜ、水に中に沈まないのか、これも不思
議でたまりません。ほかの虫は水の中では沈んでしまうのに、アメンボは浮
いて、すいすい走っています。どうしてなのでしょうか。
  この教材は、これら子ども達の疑問に分かりやすく答えてくれていま
す。本教材文を、子ども達は興味関心をもって読み進めていくことでしょ
う。

  この教材文には、二つの課題提示文があります。
(1)どうして、あんなにうまく水面にうかんだり、走ったりできるので
   しょうか。
(2)水の上でくらしているアメンボは、いったい何を食べて生きているの
   でしょうか。
  この二つの疑問文は、ぴったりと子ども達のアメンボにたいする課題意
識と重なります。
 (1)の課題提示文には二つの課題が書かれています。「な
せ、水面に浮かぶことができるか」と、「なぜ、はしったりできるか」で
す。子ども達はその解答文を読み進めながら、なに、なに、そうか、そう
か、そういうわけか、と納得しながら読みすすめていくことでしょう。
  この教材文は(1)と(2)の課題提示文(問題設定文)に、その理由
はこうだ、水に浮くわけはこうだ、走るしくみはこうなっている、アメンボ
の食べ物はこうだと、科学的な説明、論理をおった文章でわかりやすく説明
しています。
  最後に、まとめとして、アメンボは人間の流す洗剤や石鹸の汚れたで水
で水上に住めなくなっている、アメンボが安心して住める自然を取り戻そう
と呼びかけて、環境問題についても語っています。


           
音声表現のしかた


  同じ文章構造の場合は、大体は音声表現のしかたは類似しています。例
えば、並列の重文の場合は、その区切り(間あけ)のしかたは殆んど同じで
す。条件・帰結の重文の場合も、その区切り(間あけ)のしかたは殆んど同
じです。同類の接続詞の場合にも、例えば、逆接の接続詞の場合は、それら
接続詞はみな同じ音声表現のしかたになるのが殆んどです。
  本稿では、教材文「アメンボはにん者か」の中から同じ音声表現になる
文章部分や語句を同類として一つにまとめ、一つの節(章)として整理して
記述してあります。
  「アメンボはにん者か」の中から抜き出した同じ音声表現になる文章個
所を同類としてまとめ、それらを全体で12個の節(章)として分類し、整
理して記述してあります。それぞれの節(章)の中の練習文は、同じ音声化
技術を使って読めばいいようになっています。
  それぞれの節(章)の中にある練習文は、同類の音声化技術を使って音
読練習すればよいようになっています。子ども達がこれ練習文を音読練習す
ることで「そうか、こんな文章構造になっているときは、みなこんな音声表
現のしかたになるんだなあ」と気づいていくことでしょう。
  そして、これら練習文を繰り返し音読練習することによって、「アメン
ボはにん者か」本文全体を音声表現するときは音声表現のしかたを分析的に
おさえながら読んでいく力が身につくようになるでしょう。また、また、こ
れら基礎基本の力が身につくと、これらを応用して音声表現していくように
なるでしょう。
  以下、12個の節(章)に作成した「……の読み方練習」について詳述
していくことにします。


【1】問いかけ文の読み方練習

 ≪教材文の中から課題提示文だけを取り出して、音読練習するようになっ
ています。
 説明文の文章には殆んどが下記のような課題提示文があって、その後にそ
れを解決していく実験や論証の解答文が付くのが普通です。
 課題提示文の音声表現は、問いかけているように、聞いているように、
質問しているように読みます。「のでしょうか」は、大体が尻上がりになり
ます。「てください」は命令や誘いかけの音調になります。「わかるでしょ
う」は、聞き手に聞き手に強く念押しして、問いかけ・さそいかけているよ
うな音調になります。≫

練習文
(1)どうして、あんなにうまく水面にうかんだり、走ったりすることがで
   きるのでしょうか。
(2)うかんだはりをよく見てください。はりの重みではりの周りの水面が
   くぼんでいるのが分かるでしょう。
(3)水の上でくらしているアメンボは、いったい何を食べて生きているの
   でしょうか。


【2】重文の読み方練習

 ≪教材文全文の中から重文だけを取り出して、音読の練習するように作成
しています。
  重文には、並列の重文と条件・帰結の重文があります。下記の例文では
並列の重文は(1)(2)(4)(5)(6)で、条件・帰結の重文は
(3)(7)(8)です。(9)は両方が組み合わさっている三重文です。
  重文とは単文が二つ、三つ組み合わさって一文になった文のことで、重
文の一文は当然に長い文となってしまいます。ですから音声表現するときは
どこかで区切って読まなければなりません。どこで区切るか、それは単文と
単文とが連結している
個所がいいことはいうまでもありません。単文は一つの話題の陳述が一応終
止しているところで、それが二つ組み合わさった文だからです。
  以下の(   )は、(   )のなかはひとつながりにつづけて音声
表現するというしるしです。本章では、単文と単文とが連結している動詞の
連用形(中止形)、接続助詞の個所で区切るように(  )をつけていま
す。前節と後節との接続部で区切って、そこで間をあけて読むように(  
 )をつけています。
  そのほか、音声表現の上の都合からほんの軽く間をあけたほうがよい、
区切った方はよいと思われるところにも(   )をつけています。
 (   )の中は読点(テン)が付いていても、できるだけつなげて読
んで、区切りを入れないで読むようにします。余りあちこちで区切りを入れ
て読むと一文全体の意味内容が聞き手にばらばらに分かりにくく伝わり、一
文のまとまりがなくなってしまうからです。≫

練習文
(1)(これは、)(アメンボと同じくらいの長さと太さのぼうのように見
   えるので、)(アメンボのかげだということはすぐに分かります。)
(2)(けれど)(そのはりに、油かバターをぐくうすくぬってみると、)
   (はりはちゃんと水面にうかびます。)
(3)(アメンボの足は六本ありますが、)(そのうち、二本の前足と二本
   の後足の先で水面に立ち、)(残りの二本の中足の先を、走るための
   オールにしています。)
(4)(その足を広げてアメンボが水面に立つと、)(それぞれの足の先は
   水面をおしてくぼませます。)
(5)(中足は、ごく先の部分しか水をはじかないので、)(アメンボは根
   元の方まで水の中につっこんで、オールのように動かすのです。)
(6)(おなかがいっぱいになったり、つかれたりすると、)(アメンボは
   中足の先も水面につけて休みます。)
(7)(水の中には、いろいろな水生こん虫がすんでいますが、)(それら
   の多くは、生きた小魚やおたまじゃくしをつかまえて食べ物にしてい
   ます。)
(8)(そのために、)(アメンボは自分の足の先で水面にうかぶことがで
   き、)(また、にん者の特別なげたなどなしに、自分の体だけで、ど
   この水面でも走ることができるようになりました。)
(9)(アメンボは水面のこん虫として生きているのですが、)(人間がせ
   んざいや石けんなどを水に流しこんでよごしたりすると、)(大変な
   ことになります。)


【3】逆接の接続詞の読み方練習

 ≪教材文全文の中から「逆接の接続詞」部分だけを取り出して、音読練習
するように作成しています。
  逆接の接続詞部分で、そこから今までの意味内容とは逆(反対)のつな
がりになっているので、意味内容がすんなりとつながらないよ、逆のつなが
りになっていきますよ、ということを音声で知らせます。その音声での知ら
せ方は、「けれど」の「け」、「でも」の「で」、「しかし」の「し」を高
く、強く読み出していくようにします。語頭の出だしの音声を高く、強く読
み出し、その勢いをつなげて逆接の接続詞全体を読んで、前文とは意味内容
が逆に、反対につながっていくのだよ、逆の、反対の意味内容ですよ、前と
すんなりとはつながっていきませんよ、という思いをこめて読みすすめてい
くようにします。≫

練習文
(1)(けれど、)その周りには、四つか六つの丸いかげが必ずあるので
   す。
(2)(けれど)そのはりに、油かバターをごくうすくぬってみると、はり
   はちゃんと水面にうかびます。
(3)(でも)これだけだと、アメンボは水面に立っているだけです。
(4)(けれども、)アメンボは、水の表面に落ちてきた虫だけをねらって
   食べるという生き方をするようになったこん虫なのです。
(5)(しかし、)みんながかんきょうのことに気をつけるようになってか
   ら、また少しずつふえてきました。


【4】話題変えの接続詞の読み方練習

 ≪「ところで」は、その前まで述べてきた事柄の話題を変えて、新しい話
題を提示するときに使う接続詞です。新しい段落を提示するリードになる使
い方の言葉でもあります。
 このようなときには、語頭で転調した音声表現にするのがよいにです。
「ところで」の「と」を高く、強く読み出していきます。「ところで」全体
が「と」の勢いをひきずりながらも、やや下がり気味の読み方になります。
 (1)の文では高く強く出て、文末は「のでしょうか。」と質問口調で尻
上がりの読み方になります。≫

練習文
(1)(ところで、)水の上でくらすアメンボは、いったい何を食べて生き
   ているのでしょうか。


【5】論理的な接続詞の読み方練習

≪「すると」は、前に書いた事柄から次は当然にこうなる・こう考えられる
という事柄を書くときに使う接続詞です。前に書いた事柄とすんなりとつな
がる意味内容ですから、「すると」は特別に目立たせる必要はないのです
が、「すると、当然にこうなる」という意味内容をハッキリとした当然の論
理的なつながりとして続いていくことを音声の音調として表した方がよいば
あいもあります。(1)の文の場合は、「すると」をやや高めに、強めに読
んで目立たせ、「こうなっていくのだ」という思いを込めて先を読み進めて
いった方がよいと思われます。「すると、こうなる」と「すると」をやや高
めに、強めに読み出してみましょう。≫

練習文
(1)(すると、)水の表面張力によって、アメンボは水面にうかぶので
   す。


【6】主語・述語の区切りで読む練習

 ≪主語とは陳述作用(陳述部分)の題目部分です。主語とは「何かについ
て/どうだ。どうする。どんなだ。」の「何かについて」に当たる部分で
す。
 主語と述語とのあいだは、必ず区切って・間をあけて音声表現しなければ
ならないということはありません。特に文学的文章では主語と述語とのあい
だの読点(てん)個所では間をあけないで、つなげて読むほうが多いと思わ
れます。
 しかし、説明的文章ではちょっと違ってきます。主語(題目)について、
これはこうこうだと説明や解説をしているわけですから、題目部と陳述部と
の論理的な区切りは音声表現で明確に区分けして読んだほうがよい場合が多
くあります。
  主語個所にある題目について言えば、述部個所では「こうこうだ」と陳
述(判断作用)しているのです。つまり、主語と述語とのあいだでは、ハッ
キリした題目提示と陳述(判断作用)の、説明や解説をしている区切りがあ
り、その論理的な区切り・言いぶりを音声表現の間をあけて表現した方がよ
い場合が多くあります。
  以下の練習文は、本教材において主語と述語とのあいだを、間をあけて
読んだ方がよいと思われる個所の文を抜き出しています。(   )の区切
りに気をつけて音読練習してみましょう。
  なお、(1)と(3)の述語個所に読点が一個ついていますが、ここは
できるならば間をあけないで、つなげて音声表現したいところです。述語部
分を余りぶつぶつと切るよりは、区切らないで「こうこうだ」と一気に読み
下したいほうがよいと思われます。≫

練習文
(1)(くぼんだ水面は、)(元の平らな状態にもどろうとして、はりをお
   し上げます。)
(2)(油をぬって水をはじくようにしたはりは、)(この水の表面張力の
   おかげで水面にういているのです。)
(3)(このように、)(アメンボは水面のこん虫として生きているのです
   が、)(人間がせんざいや石けんなどを水に流しこんでよごしたりす
   ると、大変なことになります。)


【7】指示語の読み方練習

 ≪指示語を音声表現するときは、指示されている内容をひとまとめに思
い浮かべて、それらをひとくくりにして、「それは」とか「これは」とか
「この何は」とか「そんな何は」と題目化して提示し、次に「こうこう
だ。」と述語部分で陳述してつなげていっている文構造になっているわけで
す。
  ですから、ひとくくりにして・まとめて、題目化して提示するわけです
から、「それは」とか「これは」とか「この何は」とか「そんな何は」を気
分を変えて読み出して、つまり、、高く、強めに読み出して目立たせ、次に
「こうこうだ。」と陳述部分をつなげて読み下していくようにします。そう
すると、論理的なメリハリの付いた音声表現になるでしょう。
  (3)と(4)の「このように」と「そのため」も同じ理由で、これら
の言葉を、高く、強めに読み出していくとよいでしょう。これらの言葉は前
文にある一文、二文だけの事柄を指示するのではなく、前段落全体に書いて
ある事柄をひとくくりにして、ひとまとめにして指示し、「このように」と
か「そのため」とかと書いて題目化して、次に「こうこうである。」とつな
げて陳述していっているわけです。これらの論理的なメリハリを音声で表現
していくようにします。≫

練習文  
(1)池や水たまりの浅い所では、天気のよい日に、水底にアメンボのかげ
   がうつっていることがあります。(それは、)なんとなく不思議なか
   げです。
(2)まず、真ん中にアメンボの体のかげ。(これは、)アメンボと同じく
   らいの長さと太さのぼうのように見えるので、アメンボだということ
   がすぐに分かります。
(2)アメンボだということがすぐ分かります。けれど、(その)周りに
   は、四つか六つの丸いかげが必ずあるのです。(これは)いったいな
   んでしょう。
(4)体の中から少しずつ油を出すしくみがあるからです。(その)足を広
   げてアメンボが水面に立つと、それぞれの足の先は水面をおしてくぼ
   ませます。
(3)(このように、)アメンボは水面のこん虫として生きているのです
   が、人間がせんざいや石けんなどを水に流しこんでよごしたりする
   と、大変なことになります。
(4)(そのため、)アメンボがわたしたちの近くからほとんどすがたを消
   してしまった時代もありました。
(5)わたしたちの周りに、きれいな池や小川があり、たくさんのアメンボ
   のスケートが見られる、(そんな)自然を大切にしていきたいもので
   す。


【8】論理的意味の間をあけて読む練習

 ≪下記の(1)の文を読んでみよう。どこか一箇所に論理的な読点(て
ん)を打った方がよい個所がありませんか。わたしは、「はりの重みで、」
と、「で」の下に読点を打った方がよいと思います。なぜなら、水面がくぼ
んでいるわけは、はりの重みが原因ですよ、ということを音声で知らせるた
めです。
 音声表現するときも、(はりの重みで)(はりの周りの水面がくぼんでい
るのが分かるでしょう。)のように二つに区切って読んだ方が論理的な意味
内容がハッキリと音声表現のメリハリとして表れ出てくると思います。ここ
には読点(てん)が付いていませんが、ここで間をあけて音声表現したほう
がよいと思われます。自分の考え(判断)で間をあけて音声表現したほうが
よいでしょう。≫

練習文
(1)はりの重みではりの周りの水面がくぼんでいるのが分かるでしょう。


【9】動作の様態ことばの読み方練習

 ≪(1)の「そっと」は、硬く荒々しく読むよりは、小声で柔らかく伸
ばして「そーーっと」とひそやかに読んだ方が「そっと」水面に置いた様子
や感じが出るでしょう。
 (2)は、「ちゃんーと」とか「ちゃーんと」とかの読み方のほうが様子
や感じが出るでしょう。
 (3、4)は、小さく「すこーし」とか「ほんーのすこーし」とかと読ん
だ方が様子や感じが出るでしょう。そのように音声表現してみまよう。≫

練習文
(1)アメンボと同じくらいの太さのはりを、水面に(そっと)水平に置い
   てみよう。
(2)けれどそのはりに、油かバターをごくうすくぬってみると、はりは
   (ちゃんと)水面にうかびます。
(3)しかし、みんながかんきょうのことに気をつけるようになってから、
   また(少し)ずつふえてきました。
(4)気づきにくいのは、人間にとって(ほんの少し)のせんざいでも、ア
   メンボにとっては生きていけなくなるということです。


【10】かんでふくめて読む練習 

 ≪これは、意味内容が込み入った書かれ方になっている文章部分を論理
的なメリハリにして、つまり意味内容の論理をゆるめたり、はったり、圧縮
したり、上げ下げを使ったりして音声表現に出そうとすることです。これで
は読者の皆さんは理解しにくいと思われます。ここでは音声で説明すること
ができないのが残念です。
  ことばで表現して書くとどうしても分かりにくい表現になってしまいま
すが、要するに聞き手に分かりやすく伝わるように噛んで含めるように丁寧
な抑揚で音声表現するということです。
  次の三つの文章をそのような噛んで含める丁寧な読み方をして読んでみ
ましょう。≫

練習文
(1)それはアメンボの足の先のかげなのです。いえ、もっと正かくに言え
   ば、アメンボの足先でおされてくぼんだ水面なのです。
(2)うかんだはりをよく見てください。はりの重みではりの周りの水面が
   くぼんでいるのが分かるでしょう。くぼんだ水面は、元の平らなじょ
   うたいにもどろうとして、はりをおし上げます。このときに働く力を
   水の「表面張力」といいます。油をぬって水をはじくようにしたはり
   は、(この水の表面張力のおかげで水面にういているのです。
(3)アメンボが水面に立っていられるのも、同じりくつです。アメンボの
   足の先は、水をはじくようになっています。体の中から少しずつ油を
   出すしくみがあるからです。その足を広げてアメンボが水面に立つ
   と、それぞれの足の先は水面をおしてくぼませます。すると水の表面
   張力によって、アメンボは水面にうかぶのです。


【11】長い体言修飾部がある文の読み方練習

  ≪下記の(1)の文は、「この虫」の上部に、どんな昆虫かというと
「水の表面に落ちてきた虫だけをねらって食べるという生き方をするように
なった(こん虫)」という長い体言修飾部が接続してい述語部分です。
  音声表現するとき、この長い体言修飾部をあちこちで区切って読んでし
まうと全体の意味内容が分かりにくい読み方になってしまいます。ほんとは
区切らないで一気に読み下してしまうのがいい
のです。しかし、どこか途中で一箇所ぐらい息つぎをしなければ息が続かな
いということもあります。ならば、途中で息をついでもいいのですが、その
息つぎはそこで下がってしまうと文が終了してしまうので、息つぎ個所の間
あけでは次へ平らに続く音調にして息つぎをして、先へと読みすすめるよう
にします。
  (2)の文は、「時代」の前に「アメンボがわたしたちの近くからほと
んどすがたを消してしまった(時代)」という体言修飾部が接続していま
す。ここは(1)ほど長い体言修飾部でないので「……時代もありまし
た。」まで一気に読みすすめることができるでしょう。≫

練習文
(1)アメンボは、水の表面に落ちてきた虫だけをねらって食べるという生
   き方をするようになったこん虫なのです。
(2)そのため、アメンボがわたしたちの近くからほとんどすがたを消して
   しまった時代もありました。


【12】段落内の大きな区切りで読む練習

 ≪具体的な段落例で話したほうが分かりやすいでしょう。
 はじめに下記の(1)(2)の段落の文章を先に読んでください。
 (1)の段落では、「昔、にん者たちは、特別なげたを……」の前で意味
内容が二つに区切れていますね。ですから、「……スケートをしているよう
です。」の後で文をさげて読みおさめます。そこで軽くひと呼吸を入れて間
をあけ、それから、「昔、にん者たちは、特別ながた……」と読みすすめて
いくようにするとよいでしょう。一段落内で大きく二つに分かれている個所
では、分かれている個所で二つの分けて、間をあけて読みます。
 (2)の段落の区切りをみてみると、はじめに六本の足について、次に二
本の前足と、二本の後足について、それから中足について、書いています。
ですから、(アメンボの足は六本ありますが、)(そのうち、二本の前足と
二本の後足の先で水面に立ち、)(残りの二本の中足の先を、走るための
オールにしています。)(中足は、ごく先の部分しか水をはじかないので、
アメンボは根元の方まで水の中につっこんで、オールのようにうごかすので
す。)のような区切りを入れて、(   )と(   )との区切りで軽い
間をあけて読みすすめるとよいでしょう。
 (3)の段落は、はじめに水生昆虫一般の食べ物について、次にアメンボ
の食べ物について、書いています。ですから、「けれども」の前の文章部分
と、その後ろの文章部分とに大きく二つに分けて、そこに区切りの間を入れ
て読みすすめていくとよいでしょう。≫

練習文
(1)アメンボは水面に軽々とういて、すいすいと走っています。まるで水
   面でスケートをしているようです。昔、にん者たちは、特別なげたの
   ようなものをはいて、水面を走っていったといわれています。でも、
   あめんぼににん者のげたはありません。
(2)アメンボの足は六本ありますが、そのうち、二本の前足と二本の後足
   の先で水面に立ち、残りの二本の中足の先を、走るためのオールにし
   ています。中足は、ごく先の部分しか水をはじかないので、アメンボ
   は根元の方まで水の中につっこんで、オールのようにうごかすので
   す。
(3)水の中には、いろいろな水生こん虫がすんでいますが、それらの多く
   は、生きた小魚やおたまじゃくしをつかまえて食べ物にしています。
   けれども、アメンボは、水の表面に落ちてきた虫だけをねらって食べ
   るという生き方をするようになったこん虫なのです。そのために、ア
   メンボは自分の足の先で水面にうかぶことができ、また、にん者の特
   別なげたなどなしに、自分の体だけで、どこの水面でも走ることがで
   きるようになりました。


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