父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集    2015・2・23記




         
テレビの見せ方




        
テレビ漬けの子どもたち


 ”テレビに子守りをさせないで”という文句が一時流行しました。子ども
たちは幼児期からテレビを与えられて、テレビを見ることに慣らされて育っ
ています。小中学生の時代になると、学習塾や習い事のために友だち同士の
遊びの時間の調整がつかなくて、自宅で一人でテレビを見るという現状にあ
ります。
 テレビは家の中で気楽に娯楽として無料で楽しめます。スイッチを押すと、
さまざまな画面が映ります。ゴロエイと横になって、手枕で見ることができ
ます。テレビを見始めると、またたくまに時間が過ぎていきます。ソファー
に片ひざを立てて、スナック菓子をつまみながら見ることができます。
 今のテレビ番組は視聴率を高めるために軽薄短小な娯楽・お笑い番組が多
く、軽薄短小が視聴者に喜ばれる傾向にあります。テレビに期待するものは、
気晴らしや気休めでしかなくなっています。
 一方的に送られてくるのがテレビ放送です。子どもにとって好ましい番組、
好ましくない番組、いろいろあります。いわゆる教育番組として望ましい番
組もあります。一概にテレビを非難することはできません。
 チャンネルも、BSそのほかも入れたら数えきれないほどあります。ある
番組に対して良いという人もいるでしょうし、悪いという人もいるでしょう。
チャンネルの選択権を持っているのは視聴者です。どうすれば、今の状況の
中で、理想的なテレビのある生活を送っていくか、賢い視聴者になるか、上
手にテレビを視聴していくか、を考えていくことが重要となってきます。



          
テレビの功罪
 

 これについて、わたしが以前に勤務していた学校(横浜市立東台小)の保
健部が調査したアンケートがあります。集計結果では、次のようになってい
ます。

≪テレビのプラス面≫

・話題が多くなる。
・知識が豊富になる。
・映像で分かりやすく理解できる。
・一家団らんに役立つ。
・実際に見ることができない風景、出来事を、いながらにして見られる。
・世の中の移り変わりを早くキャッチし、肌で感じることができる。
・実際に見たものを再発見して楽しむことができる。
・家族で、映像について、話し合いの場がもてる。
・気分転換になる。
・博学になる(ドキュメント、ニュース、クイズ番組など)
・想像力が広がる。
・良い番組なら情操教育になる。
・友だちと共通の話題ができる。
・ドラマ、スポーツなど、家の中で観劇、観戦できる。
・物事に興味を多く持たせてくれる。
・流行のギャグがよくわかる。
・善悪の判断ができるようになる。
・(ニュースなど見て)社会への関心が高まる。
・アニメ漫画などで、生命の大切さ・正義などを伝えられる。
・絵を見ながら、言葉が増え、使い方が分かってくる。


≪テレビのマイナス面≫

・親が子に語る時間が少なくなる。
・筋道だててじっくり考える力が弱くなる。
・遊びやスポーツの時間が奪われる。
・生活のリズムが乱れる。
・受け身な思考のなり、画一的な思考になり、多様な思考や創造的な思考が
 弱くなる。
・学習への集中力が弱くなる。
・がまん、根気、努力が弱くなる。
・就寝時間が遅くなる。
・動作がにぶくなる。
・視力が弱くなる。
・番組の思考=自分に思考、となってしまって、ほんとうにそうなのか考え
 直したりしないで、「ヘェーそうなの」で終ってしまう。
・部屋数が少ないので、見せたくないとおもっていても、一緒に見てしまう。
・活字離れになる。本を読まなくなる。
・姿勢が悪くなる。
・よくない知識も親のいない時にはいる。
・手伝いをしなくなる。
・次々と見たくなる。けじめがつかなくなる。
・注意散漫になる。
・外へ出て遊ばなくなる。
・その人物になりきり、言動のまねをする。



       
テレビは禁止すべきか


 親はこう言います。「わが子はテレビばかり見て勉強しない。遊んでばか
りいて勉強しない。マンガばかり見て勉強しない。ほんとうに困ったしま
う」と。
 しかし、子どもからテレビを奪い、遊びを奪い、マンガを奪ったら、勉強
するようになり、学業成績が向上するでしょうか。わたしの教職経験から申
しますと、よく勉強し、成績が向上する子は、よくテレビを見るし、良く遊
ぶし、よくマンガを読む子どもだと言えます。
 テレビを見ないし、マンガも読まないし、遊びが好きでない子は、学校の
成績もよくありません。親は、子どもがじっと机の前に座っていると安心す
るようですが、机の前に座っていれば学習効果が上がるというものではあり
ません。
 子どもは好奇心旺盛な探検家です。あっちに集中し、こっちに集中すると
いうように、ひとっところにじっとしていません。頭の切り替えを素早くさ
せ、頭の回転を鋭くして、何事にも興味を持って、集中して取り組む能力の
ある子ども、このような子どもが学業成績が伸びる子どもだと言えます。
 勉強には息抜きが必要です。学習効果を上げるには、息抜きが必要です。
テレビや遊びやマンガは息抜きの気休めと考えればいいのです。息抜きや気
休めを、どう時間配分していくか、ここに気を配るようになったらしめたも
のです。


     
選んで計画的に見る習慣を作る


 テレビは見せて良いのです。テレビは見せて良いが、のべつ幕なしに見せ
っ放しにするのがよくないのです。いつまでもだらだらと見せっ放しにしな
いためにどうすればよいか。
 それには、テレビ番組を選択し、計画を立てて見るようにすることです。
見る番組、見ない番組を前もって決定し、今日のテレビ番組はAとBを見る、
合計1地時間だ、というように選んで、計画を立てて見る習慣を作ります。
Aの番組は5時〜5時半までだ、Bの番組は7時〜7時半までだ、5時半か
ら7時までの時間は夕食、風呂の時間だ、5時までには宿題を終わらせる、
だから、4時半までに遊びから家の帰らなくてはいけない、というように下
校からスケジュールを立て、そのスケジュールにそって時間を活用にしてい
くようにします。
 時間の観念がなく、だらだらと無為に時間を過ごすのが一番よくありませ
ん。計画を立て、次はコレ、次はアレ、ああ忙しい、忙しい、と思いながら
こうどうしていくようになったら、しめたものです。時間を有効に生かして
行動していく習慣を作りましょう。
 一週間の見たいテレビ番組を選択し、番組名と時間を決定し、一週間の生
活日程表に記入しておきます。月曜日はコレ、火曜日はアレ、……。一日に
ゼロ、多くて二つぐらいの番組にとどめておくように選択しましょう。親と
子でよく話し合って決めるようにしましょう。親の一方的な押しつけをしな
いことです。子どもの意見を尊重しましょう。
 そうして決めたテレビ番組を子どもが夢中で見ている時、親が用事を頼ん
だり、勉強しなさいと声をかけるのはよしましょう。子どもが楽しみにして
いた番組です。ゆっくり心ゆくまで見せてやりましょう。



    
 主体的に選択し活用していく

 
 テレビは、さまざまな情報をわかりやすく伝えてくれます。テレビから得
た知識は、学校の勉強にも役立ちますし、友だちとの共通の話題に欠かさな
いことになります。テレビを見ると親子の対話の時間が奪われるという意見
がありますが、テレビの情報について親子が話題にして話し合えば、てれび
は親子の共通の話題の材料になります。
 テレビを積極的に活用していくようにしたいものです。新聞朝刊のテレビ
番組表をよく検討して、これは気休めに見る番組、これは知識を獲得する番
組というように、自分なりの価値基準で選択し、気休め番組は気休めに見れ
ばよいし、知識獲得番組はそれなりの意識を持って見るようにすればよいの
です。
 テレビは局側から一方的に流され、視聴者は一方的に受け取るだけですか
ら、視聴者は主体的に選択してみることがどうしても必要です。自分なりに
テレビを使っていくこと、使って見ていくことが重要です。



       
親子で共通の話題にする


 親子でテレビを見たら、映っている画面の事柄について感想を言うように
しましょう。子どもから感想を聞き出したり、親が解説を加えたりしながら、
テレビの画面について親子で語り合うことによって、何について、どう心を
動かせばよいかを親が手本を示してやるようにします。親が子にする感情の
教育、情操の教育ともなります。
 テレビニュースを見ながら、

「また、人殺しなの、恐ろしい、ぶっそうな世の中ね。何が原因なの」

「オートバイがスピードを出し過ぎて、それを避けようとして、大型バスが
 急カーブをきったため、オートバイが横倒しになったんだって。スピード
 の出し過ぎはいけませんね」

「今日も巨人が負けたの。ことしの優勝はどこでしょうね。広島? それと
 も横浜?」

「無銭飲食って、知ってる? お金を持たないで食堂に入って、お金を払わ
ないで出てくることよ。世の中には悪い人もいるのよ」

「誘拐犯人は、もうつかまったかしら。まだなの。知らない人についていっ
 ちゃだめよ。あなたも、あの子のようになるのよ」

 ドラマを見ながら
「あの人、大嫌い。いけない人ね。……さんと似てるところがあるわ、そう
 思わない?」

「まあ、すてきなドレスだこと。お母さんも、一度でいいから、着てみたい
 わ」

「あの人、かわいそうね。……さんが……をしてあげればいいのにね。いじ
 わるだわ」

「きれいなお花畑だこと! きれいな景色ね。どこの場所かしら? 行って
 みたいわ」

「あの男(女)について、どう思う? あなただったら、どうする?」

 このようにテレビ画面の出来事について親が感想を、解説を、評価を、疑
問を言うようにしていきます。子どもが親の心の揺れ動きに引き込まれ、親
と同じ気持ちになって、感情同化して心を動かしていくでしょう。違うとい
う意見も出るでしょう。
 子どもの感情(情操)は、子どもの周囲の大人たちが、何について、どの
ような感情反応を示しているか、社会の事柄について、どのような正邪善悪
の感情反応をしめしているか、美醜の感情反応をしめしているか、喜怒哀楽
の感情反応を示しているか、子ららを見習って身につけていきます。周囲の
大人たちの感情評価の反応、態度の示し方が、子どもの物の見方、感じ方、
考え方、行動のしかたに刷り込まれ、子どもの感情を育てっていくことにな
ります。
 テレビの画面を見て、悲しみに同情して涙を流し、喜びに共感して笑い転
げ、政治社会問題の怒りに男性は公憤を、女性は私憤を(その逆もあり)語
り、感情の共有と共感によって、親も子も、同じ人間としての地平から連帯
意識を育つようになります。


       
テレビ見過ぎて夜更かし


 症食を食べないで学校に来る子どもがいます。なぜ朝食を食べてこないか
と原因を調査すると、「おなかがすいてないから」とか「たべたくなかった
から」と答えます。くわしく事情を聞くと、テレビを見過ぎて夜更かしをし
たことに原因がるようです。夜更かしをした翌朝は、食欲がわかないのは当
然です。お水だけ飲んで登校するとか、パン一枚い紅茶やコーヒーを飲んで
登校するとかになります。
 夜遅くまでのテレビの見過ぎは寝不足の原因となり、翌朝の食欲不振だけ
でなく、翌日の気分不快、心身の疲労、からだの変調の原因ともなります。
翌日は、目は開いていても、からだは眠っているという状態になります。学
校に来ても、はればったい目で、さえない顔付をして、学習の能率が上がり
ません。気力もなく、外で元気に遊ぶ意欲もありません。生活のリズムは乱
れ、体調を狂わし、からだの変調をきたします。
 最近、小学生に仮性近視が増えています。これはテレビの長時間視聴が原
因の一つにあげられています。テレビの夢中になると、どうしても画面に近
寄りがちとなり、テレビ画面にくいつくようにして見ることになりますが、
これが目を悪くする原因となります。画面から2〜3メートル、離れるのが
いいと言われています。

           
参考資料(1) 

 下記は、読売新聞(2014・10・5)の投書欄「気流」に掲載されていた記事
です。

       テレビ消し集中
             主婦 真保美智子 47 (東京都北区)
 
 中学1年生の娘はリビングルームでテレビを見ながら勉強する癖が直らな
い。小学5年生の息子は家で勉強する習慣がなかなか身につかない。
 そこで「夜の勉強タイム」を設けることにした。週に二回ほど、子どもた
ちの見たい番組がない日に、普段はつけっぱなしにしているテレビを消す。
親子3人が一緒にダイニングテーブルの前に座り、30分から1時間ほど、
それぞれの勉強をする。
 私は、かつて好きだった数学の参考書を買って読んでいる。
 子どもたちから「勉強しやすい」と好評だ。



            
参考資料(2)

 下記は、東京新聞(2015・1・27)の社会面に掲載されていた記事です。

        2歳児にTV2時間3割
           母親調査、4時間超は5%

 二歳の子どもに対し、母親の三割がテレビやDVDを一日二時間以上を見
せていることが、全国の親子を対象にした環境省の大規模調査で分かった。
5%は四時間以上見せていた。
 分析に当たった山縣然太朗山梨大教授は「テレビなどを長時間見せると、
子どもの発達に必要な人と関わる時間や睡眠時間が短くなりがちだ」と悪影
響を指摘した。
 調査は昨年11月に行い、母親二万六千五百二十一人が回答した。子ども
に一日四時間以上テレビやDVDなどを見せていると答えた人は5%、二〜
四時間は24%いた。一から二時間が42%、一時間未満が27%で、見せ
ていない人は2%だった。母親の年齢が若いほど時間が長い傾向があり、二
十代前半では二時間以上が34%を占めた。



            参考資料(3)

 インターネットで「テレビ視聴時間」と書き入れて検索すると、多くの
件数が出現します。下記に、三つだけ記します。

http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/gakukihon4/sokuho/soku_10_01.html

http://www.macromill.com/r_data/20040623media/

http://www.hakujyuji.com/media-syounikagakkai.htm



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