父母と教師に役立つ学級懇談会の話材集    2015・2・23記




  
 通知表の見方、受けとり方





           
通知表とは


 親にとっては、子どもが学校からどんなテストの成績をとってくるか、ど
んな通知表をもらってくるかが大きな関心事でしょう。よい成績であれば喜
び、芳しくない成績であればがっかりするでしょう。子どもに対する期待が
大きければ大きいほど、学校から渡される成績に、親は一喜一憂する度合い
が深くなるでしょう。子どもにとっては、悪い成績は親に見せるのは気が重
く、隠して見せたくないもの、ということになります。
 通知表は、子どもの学校生活の実態や成長の様子を親に知らせるためにあ
ります。親は通知表を受け取ったら、今学期はどんなところを頑張ったか、
先ず、褒めてあげるようにしましょう。褒めるところがない、なんて言っち
ゃいけません。良いは良いなりに、悪いは悪いなりに、どこかは褒めるとこ
ろがあるはずです。探せば、次々と出てくるはずです。普段、思っているわ
が子の良いところ、学校でもそうなんですから、それを語ってやっていいの
です。
 通知表を親に差し出す子どもは、不安そうな顔で親の顔色、表情をじっと
覗き込んでいることでしょう。先ず、褒められたら、子どもはとたんに母親
を・父親を、大好きになるでしょう。学校へ行くこと、勉強することが大好
きになるでしょう。けなされたら、学校へ行くこと、勉強することが大嫌い
になるでしょう。
 先ず、褒めたら、次に来学期の学習意欲をもりあげ、よりよい個性を伸ば
していく励みのコトバを与えていきます。通知表には書いてなくても、病気
もせず元気に学校へ行けたこと、友だちと仲よく喜んで学校へ行けたことを
褒めてやりましょう。その次に、来学期は、どんなところを頑張ればよいか、
自覚(目当て・目標)を与えるコトバをかけてやります。通知表は、教師と
家庭の連絡を密にし、一致協力して継続的に効果的に指導に当たるための一
つの参考資料です。通知表は、そのためにあるのです。子どもが学校が好き
になり、勉強が好きになり、友だちと交わることが好きになるため、教育効
果が上がるように使っていくことが大切です。


      
通知表のつけ方を知らせる


 通知表の成績がどのようにしてつけられているかを、教師は親によく知ら
せておくことが大切です。親の関心は、通知表の中でもおそらく国語とか算
数とかの各教科の成績に集まるでしょう。多くの親は、どのようにして各教
科の成績がつけられているかを知りたがっていると思っています。
 ある母親は、こんなことを言っています。中一の息子の英語の成績が納得
できないのです。中間試験が98点、学期末が100点だったのに、通知表の
評定は「3」。息子のクラスでは百点が中間テストで5人、学期末で4人でし
た。日ごろの学習態度に問題があったとしても、せめて「4」ぐらつけても
いいのではないでしょうかと。
 このような疑問に答えるために、教師は学級懇談会などで今学期の通知表
は、各教科の成績は、行動の記録は、こうしてつけたということ、その観点
を知らせることが大切です。その他の項目も同じです。
 父母が通知表の成績に納得できない場合は、先生に「どうしてこういう成
績なのでしょうか。どんな観点で成績をつけたのでしょうか。どうしたらも
うちっと成績が伸ばせますか。親は子にどうコトバをかけてやったら成績が
伸ばせますか」と率直に質問してみましょう。抗議とか文句とかわが子をけ
なすコトバとかでなく、これからの勉強の仕方のアドバイスを受けてみまし
ょう、質問(相談)をしてみましょう。親と教師と子どもが一緒になって成
績が向上するための質問(相談)になるようにしましょう。
 通知表の形式は、それぞれの学校(地区教育委員会)によって違います。
日本全国が同じ形式の通知表ではありません。ひとつの教育委員会管内では
同じ形式の通知表を使用している地域が多いのではと思いますが、文科省で
この形式します、と一つに決めているわけではありません。どんな形式にせ
よ、各教科の成績、行動の様子、特別活動の記録、出席欠席の記録、通信欄
などがあるはずです。
 通知表の見方は、教科の成績欄だけに注目するのはよくありません。特別
活動の記録、行動の記録、身体の記録、その他にも注目しましょう。強調性、
責任感、公共心、根気強さなど、よい個性を見い出して褒めてやりましょう。

 親の関心はやはり各教科の成績欄でしょう。教科の成績には、絶対評価、
相対評価、個人内評価などの評価方法があります。教師は、これら三つの評
価方法の違いを、大雑把でいいですから、説明しましょう。



         
三種類の評価方法


 絶対評価でつけている場合は、どのような絶対評価になっているか、その
到達目標(内容)と、その水準段階の区別のおおよそを親に知らせましょう。
絶対評価の長所は、平等にどの子にも到達している地点(水準)を示すこと
が特質です。親は個人面談で、うちの子は学級内で何番目ぐらいの成績です
か、学級内でどの水準にありますか、という素朴な質問をする方がいますが、
これは相対評価であることを知らせます。
 相対評価でつけている場合は、どのような相対評価でつけているか、五段
階、三段階など、評定人数の配当割合、各教科の平均点、「4」にちかい
「3」か、「3」にちかい「4」か、などについて親に知らせるとよいでし
ょう。相対評価の長所は、その子が学級内でどのレベルにあるかを示してい
ることです。短所は、学級全員が成績優良のハイレベルが揃っていても、
「1」や「2」をつけなくてはならないこと、五段階や三段階の人数枠が決
まっているので、努力の跡が評定されないこと、誰かが上がれば、誰かが下
がる、という評定方法であることを知らせます。
 個人内差違で成績をつけたなら、何がよかったか、何が悪かったかを、具
体的な事例を挙げて知らせましょう。
 各教科の成績は、数字や○×だけで評価できるものではありません。個人
面談または通信欄で知らせる必要があります。日常の授業態度、学習意欲、
発表力、集中持続力、話しを静かに聞く力、鋭く反応する力、反応の速さ、
技能の完璧さ、作業の速さと仕上げのよさ、他児童(教師)の発言から触発
されて新しい考えを導きだす力、創造し工夫する力、ノートのとり方、文字
のきれいさ、その他の特徴的な事柄を知らせます。



        
  親のコトバかけ方


 親は、とかくすると通知表を受け取ると、よくない個所を見つけて、素早
く、鋭く見出して、小言を言いがちです。近所の同級生と比較したり、兄弟
と比較したりして小言を言いがちです。
 子どもは母親にこう言うでしょう。百点と五十点のテストを同時に見せる
と、百点の方を褒めないで、五十点の方だけとりあげてガミガミと叱ると。
母親はこうして励ましたつもりでしょう。しかし、子どもは、がっかりする
だけ、気落ちするだけです。劣等感を植え付けられて、がんばろうという意
欲をなくしてしまうでしょう。テストの点数や通知表は、叱る材料にしない
で、励ます材料にする、よしがんばるぞ、という意欲を与えるコトバかけに
しましょう。こうするのが良い親・賢明な親です。
 こんな小言を言う母親はいませんか。「兄ちゃんはね。あなたと同じ4年
生のとき、算数は「5」だったわよ。「2」なんかとって恥ずかしいと思わ
ないの。兄ちゃんをごらんなさい。買ってあげた算数の問題集を、毎日、き
ちんと勉強しているでしょ。それに較べ、あなたは問題集をはじめの4ペー
ジしかやらなかったじゃないの。それに文字は汚いし、整理整頓もできてな
いし、全くだらしがないんだから。こんな成績では、お母さん、恥ずかしく
て学校にも行けないわ。」
 さらに小言が、通知表から別の方向へ広がります。
 「あなたと一緒に水泳教室に入ったA君は、もう五級になったそうよ。そ
れに較べて、あなたはまだ八級だなんて、お母さん、恥ずかしいわ。」
 母親の小言は、まだまだ続きます。
 「C君は先日、私の家に電話をかけてきたでしょ。C君のコトバづかいが
しっかりしていて、お母さん、感心したわ。おばさん、こんにちは、この頃、
たいへん暑いですね。おかわりありませんか。お元気ですかって言うのよ。
それに較べて、あなたは道路でB君のお母さんに会っても、挨拶もできない
んだから。お母さん、恥ずかしいわ。だれに似ているのかしら。」
 子どもは、それぞれに個性も、持ち味も、性格も、精神的な成長発達も、
身体的な発達過程も、みな違います。顔が違っているように、人間は一人一
人が多様な能力を潜在させており、その能力の現れは一様でなく、それぞれ
に個人差があります。長所もあれば、短所もあります。長所が短所の誘因に
なっていたり、短所が長所の誘因になっていたりもします。
 このように一人一人の個性や発達過程に個人差があり、一人一人に長所も
あれば短所もあるわけですから、同級生と比較したり、兄弟姉妹と比較して
も、何の意味もありません。比較の対象にならないのです。同級生や兄弟姉
妹と比較するのでなく、本人の持ち味を生かすように、少しでも頑張ってい
る個所を見い出して、それを褒めてやることです。褒められれば、自信をも
ちます。その自信ががんばりのきっかけになり、努力を始めるでしょう。 
 「あなた、だめ」を繰り返したら、本人が「どうせ、ぼくは、だめ。やっ
てもだめ人間だ」と自分からあきらめてしまい、自分はそういう人間だと決
めつけてしまい、ダメ人間として、頑張らない、努力しない行動をするよう
になってしまいます。本人の特性、特技、個性、長所を見い出しましょう、
発見しましょう。それを生かして励ますコトバかけをするようにしていきま
しょう。


           
親の励まし方


 母親は、通知表を見て、こう言います。
「随分、成績が下がったわね。4がひとつだけじゃないの。3がみっつで、
2が四つもあるじゃないの。お母さん、悲しいわ。今学期は学校を一日も休
まなかったのだから、もっとよい成績になるのが当然だと思ってたわ。毎日、
遊んででばかりいるから、こんな成績なのよ。」
 多くの母親は、通知表の評定を見て、「4」がいくつ、「2」がいくつ、
と数字に一喜一憂します。成績が悪いところを見出して小言を言います。叱
咤激励しているつもりなのでしょうが、結果だけにこだわって、感情的に小
言をいっているだけです。これでは、子どもの心は暗くなり、学習への意欲
がなくなり、勉強するのがいや、学校へ行くのがいや、ということになりま
す。
 逆に、通知表を受け取っても何も言わない親がいます。何も言わない親も
よくありませんが、ヒステリックに叱りつける親もよくありません。
 通知表は、子どもの学校での様子を家庭に知らせ、教師と父母とが協力し
て、子どもの成長発達をよくしていくためにあるものです。通知表を、子ど
もを励ます手がかりとして有効に活用していくようにしましょう。
 通知表から小言の材料、叱る材料を見い出すのではなく、褒める材料、う
れしがらせる材料、励ます材料を見い出して、次へ飛躍・ジャンプさせる手
がかりに活用していくようにしましょう。劣等感を持たせないこと、やれば
出来る、という自信を持たせることが重要です。
 どこかによいところがあるはずです。親バカになって、わが子のよい所を
見い出すことができるのが、よい親なのです。親バカになれる親、褒めて、
自信を持たせる親、よしやるぞというがんばりを与える親、これが賢い親な
のです。学習意欲に火を灯してやる、燃えたぎらせる親になりましょう。あ
せらず、急がず、励ましのコトバをかけてやりましょう。
 子どもは、こんな親を望んでいます。自分のよい所を褒めてくれる親、自
分を認めてくれる親を望んでいます。気軽に相談できて、何でも教えてくれ
る親を望んでいます。自分を裏切らない親、頼りになる親、尊敬できる親を
望んでいます。


       
物を買ってあげて励ます


 通知表の成績が上ったら自転車を買ってあげよう、ゲームソフトを買って
あげよう、という約束をする親がおります。百点のテストをとったら、一枚
百円をあげよう、自分の部屋を三回掃除したら二百円をあげよう、食事の後
片付けをすれば一回三十円をあげよう、などの約束をする親がいます。わが
子の成績を上げたい願いから、勉強してもらいたい願いから、お手伝いの癖
をつけたい願いから、こんな約束をするのでしょう。
 一時的な効果のあがることもあるでしょうが、これは子どものしつけの教
育上から、悪い結果を生むだけです。勉強やお手伝いをするのはお金のため
だと考えるようになります。物欲にたけた子になります。物事を金銭に換算
して行動する子になります。すべてお金のために行動する人間になります。
金銭に換算するのが当然だと考える大人になります。ボランテア、善意の行
動、美徳・仁徳・無償の奉仕活動の行動を嫌う人間に育ってしまいます。



         
上手な励まし方


 通知表は、褒める材料に使いましょう。褒めて、自信を与え、おれ・わた
しも、やればできる、がんばればできる、努力すればできる、という意志を
持たせるように使っていきましょう。「意志を持たせる」とは「意欲と志を
持たせる」ということです。
 来学期もがんばるぞと、やる気をおこす材料に使いましょう。○×覧に○
が付いていれば、そこを褒めましょう。「2」が「1」に下がらず、そのま
まに続いていたら、下がらずにがんばった努力を褒めましょう。主要教科
(国語、算数、理科、社会科)がダメでも、体育や図工がよかったら、そこ
を褒めましょう。何か一つは褒めるところがあるはずです。三つ、四つとあ
れば大いにけっこうです。よいところを探しましょう。そこを褒めましょう。
変化がなく同じ個所があれば、頑張ったから下がらなかったんだよ、と褒め
ましょう。
 親は、通知表を受け取ったら、まず笑顔をつくりましょう。笑顔で、「今
学期は、病気もせず、元気に、健康で、楽しく学校へかよえたね。友だちと
も仲よく遊べたね。身長が○センチも伸び、体重も○キロも増えたね。よい
通知表をいただいてきたね」と褒めコトバをかけてやりましょう。
 人間は、おだてに弱いです。褒められて不愉快になる人間はいません。人
間は、褒められると、勇気づけられます。勇気づけられると、自信をもちま
す。自信をもたせられると、やる気がおこります。嘘でもよい、褒めて、お
だてて、調子にのせて、やる気を起こさすようにしましょう。これが、やる
気を起こすコツです。
 どんな子でも、将来、伸びる可能性を持っています。褒めて、自尊心をく
すぐれば、それが自信につながります。通知表のあらわれない本人の努力も
あります。集団に規律を守って友だちと楽しく仲よく遊べています、ケンカ
したり、仲間はずれになったりしてなければ、そこを褒めましょう。規律を
守る、友だちと遊べる、約束を守る、これはすばらしいことです。ひきこも
りでないということですから、大いに褒めて、親も自慢できる良い子だと自
信と誇りを持ちましょう。
 家庭生活でも、しつけ全般、お手伝い、作法、公徳心、これらの中に称賛
すべき材料がたくさんあるはずです。通知表に記入されてない、あらわれて
いない努力を発見して、褒めてやりましょう。わが子の努力や進歩の跡が発
見できない親では困ります。アラばかりが見える親は、ダメ親です。わが子
の良さを発見する、それを子どもに告げて自信を持たせる、そうすれば必ず
や来学期はがんばるぞと元気をもらい、意欲を新たにするでしょう。
 通知表は、人間のすべてを評価しているものではありません。教科の成績
のみが人間評価のすべてではありません。教科の成績は、子どもの学校生活
の中のごく一部分です。
 人間だれでも取り得があるものです。それぞれに持ち味があるものです。
その子にしかない良さがあるものです。その子の誇り得るものを発見し、認
めてやり、プライドを与えてやることが大切です。親は、それが当たり前だ
と考えて、それを口に出して褒めたりしないようですが、これは賢い親のや
り方ではありません。当たり前のことができることは、素晴らしいことです。
親バカになって、当たり前のことを口に出して褒めてやりましょう。
 例を挙げます。友だちに好かれている。友だちがたくさんいる。夕飯の時
間にきちんと帰ってくる。朝ご飯をきちんと食べる。後片付けの手伝いをす
る。成績が悪いが、生き物や鉄道のことのものしり博士だ。学業成績はまあ
まあだが、草花を栽培したり小動物を飼育したりで、生命へのいたわりの心
がすばらしい。マンガやイラストを描くと本職並みで、展覧会で入賞した。
鉄棒や飛び箱はだめだが、サッカーが上手で、遊び仲間ではリーダー役をし
ている。成績はよくないが、かけっこは速い。肥満児で運動はダメだが、理
科は得意だ。カメラと日本の名所についての知識はものすごい。これらの長
所を見い出して、うんと褒めたやりましょう。それが日常生活を生きていく
自信につながります。これらの長所の自信が、他の分野へのやる気に広がっ
ていきます。子どもの長所を、口に出して褒めることによって、学業成績の
やる気にもつながります。これらの長所が、大人になってからの職業や趣味
に大いに役立つことにつながっていくでしょう。



         
努力目標を与える


 重要なことは、これからどうすればよいか、努力することは何か、希望の
ある展望を持たせることです。どう努力すればよいかについて具体的方法を
語り合って計画を立てることです。
 母親は、次のような問いかけをしてみましょう。
「国語と社会の成績が上ったじゃないの。よかってね。一所懸命にがんばっ
たからよ。えらいわ。今度は、算数をがんばらなくちゃね。あなたはアタマ
はいい子なのよ。やればできるはずよ。算数はむずかしくない教科よ。易し
い教科だから、来学期は頑張ってみようよ。どんな勉強のやり方をすると、
よい成績になるかな。あなたは、どう思う? 一緒に考えてみようよ。計画
を立ててみようよ。」と誘いかけます。
 それぞれの家庭の事情があるでしょう。それぞれの児童の個別的な事情が
あるでしょう。みんな同一計画とはいきません。それぞれの事情に応じて計
画を立てましょう。やる気を起こさせるコツは、できた、できた、という喜
びをたくさん与えることです。できたら、親も一緒になって喜びましょう。
褒めてやりましょう。うれしい気持ち、やったという成就感を持たせること
です。下記は、できたという成就感、それがきっかけとなって苦手意識を克
服したという例です。


           
 参考資料

 下記は、読売新聞(2014・7・13)の投書欄「気流」に書かれていた記事
です。

            苦手意識の克服
                 主婦 橋本久美子 64(大分市)

 小学5年生のときのことだ。初めて体育で1を取り、とてもショックだっ
た。それ以来、体育に苦手意識を持った。
 そんな時、担任の先生が男女一緒にソフトボールをしようと提案したこと
があった。嫌々ながら参加したが、運良くバットにボールが当たり、ヒット
になった。
 校内マラソン大会にも挑戦した。予行練習で級友や先生が励ましてくれた
ことが自信につながり、本番では真ん中ぐらいの順位でゴールした。
 それから、苦手意識がなくなり、次の学期の体育の成績は3に上がった。



        
通知表の受けとり方の例(1)


 下記は、毎日新聞(1984・4・1)の投書欄に掲載されていた投稿文です。

      通知表、親も”評定     
              主婦 飯山英子 36 (新潟県三条市)

 三学期も終わり、小学生の三人の子どもたちは、それぞれに通知表をもら
って帰って来た。「上ったよ!」と目を輝かせて出した。成績は三人三様で
あるが、それぞれ努力のあとがあり、「3」が「4」に、「4」が「5」に
と上って大喜びである。
 学力や頭のよしあしは、ある程度それぞれに授かったものであり、努力だ
けではいかんともしがたいもの。私がいつもよろこばしく思っていることは
「行動および性格の記録」の欄で、中でも大切な「基本的生活習慣」の項目
で三人とも「上」の評定をもらって来ることである。
 その内容は「健康・安全・生理整頓・物金銭の扱い、礼儀をわきまえてい
る」ということである。ほかにも「責任感」とか「公共心」とか九つの項目
があるが、この欄はとりも直さず親の家庭教育の評価であろうと思って、い
つも謹んで拝見している。
 この欄が、「中」か「上」であれば、親としてまずまず、「下」であれば
子どもに「だめ7じゃないの」などと言っても始まらない。親が多いに反省
をして自分自身の行動を改め、しつけという親の大事な仕事に精出さねばな
らないと思っている。


        
通知表の受けとり方の例(2)


 下記は、読売新聞(2014・7・13)の投書欄「気流」に書かれていた記事
です。

        ほめられてやる気
             公務員 細江隆一 46(岐阜県八百津町)

 小学生時代、あまり勉強せず、成績がひどかった時代があった。
 しかし、母は学期末の通信簿を見るたび、「今回はマルが一つ増えている
ね。すごい」などと喜んでいた。父も「サンカクが一つ減ったということだ
な」などと褒めてくれた。
 いつの頃からか、両親の笑顔を見ると、申し訳なく感じ、勉強する気にな
った。その後、成績は少しずつ良くなっていった。もし、「どうして成績が
悪いんだ」となじられていたら、結果は違っていただろう。
 小学2年生の息子には、当時の両親の姿を手本に接している。



        
通知表の受けとり方例(3)


 下記は、読売新聞(2014・7・13)の投書欄「気流」に書かれていた記事
です。

          身体記録も大切
                無職 唐沢秀明 75(大阪府豊中市)

 小学校3年生のとき、他校の先生だった叔父が、自宅を尋ねてきて、身体
記録の記載もあった私の通信簿を見せるように言われた。手渡すと、視力が
悪いので眼科で診てもらうようにと指示された。
 眼科の検査結果も同様で、医師からメガネをかけるように勧められた。か
けたくないと言うと、毎晩寝る前に10分ほど星を見るようにと助言が受け
た。言われたとおりにすると、視力が徐々に回復した。
 今では視力は1・0だ。通信簿の中でも気づきにくい数字に目を留めた叔
父と、的確な助言をしてくれた眼科医に感謝している。



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